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2009年7月21日 (火)

言葉を超えた下町の「かっこよさ!」

43  築地はいまや観光名所で、ショッピングカートを持った伯母さん連中がバスでごっそりやってきます。最近では中国人観光客が、日本人観光客に負けないくらいあふれています。ご存知の方も多いでしょうが、観光客は築地の場内・場外と2つのエリアで買い物や飲食をしています。そんな築地に、私が時々、親しい仕事仲間と行く食事処があります。

 観光客の多いエリアから離れた場所にあるので、まず一見の客は皆無、お昼時はほとんどが中堅ビジネスマンといったところ。築地の小さな古いおうちがそのままお店になっていて、カウンターが5名ほど、その向こうで刺身を切って皿に盛っているご主人。その後ろがたたきの部屋になっていて、そこに10名ほど。そのさらに奥のスペースに5名ほど。その2つの部屋で食事するには、右横の路地からすこし行って曇りガラスの玄関をガラリと開けて入るという具合。

 昼時でも一番奥の部屋ではたいてい、仕事を終えた河岸仲間の酒盛りが男女交えて楽しげにされています。かたや、カウンターやご主人の後ろの部屋の大テーブルには、ビジネスマンがランチの「刺身定食」か「OOちらし」か「寿司定食」か「マグロのステーキ丼」を仲間と食べています。それが何と、どれをとっても活きの良い上物ばかりの刺身で美味しく、刺身の盛りなども、この値段でこれほどの見事なお店を見たことがありません。

 そして何よりも楽しいのは、50代?のご主人と奥さんの会話。まあ、いやでも聞こえる話に思わず笑いをこらえるのが精一杯。奥さんが2階からなかなか降りてこないと、だんなは「あのやろう、忙しいってえのに・・・」とブツブツ、降りてくると「ばかやろう、なにしてやがったんだ、この忙しいのに、仕事しろい!」奥さんも慣れたもので「あたしだって、OOOOしてたんだから」。言葉だけだとまるでけんかですが、これが日常会話。

 さらに先日は、こんな光景に出っくわしたのです。忙しいのに奥さんがいない。ご主人とやって来た河岸仲間との会話「おい、どうした?」「OO子が熱出しちゃって」。つまリ、きょうは奥さんがお孫さんの発熱で不在ということなのでしょう。もう、ご主人は刺身を切って盛り付けるだけで手一杯。なのに、お客様は満席で待っている。すると、いつの間にかさっきの友達?が奥さんに代わって、ガスコンロの鍋でお玉に味噌を溶かし、お客様の味噌汁を作っているのです。

 そこからが、傑作でした。その友達がご主人の背中に向かって、「おい、投げるなよ」と味噌汁の味見しながら声をかける。ふたたび「おい、投げるなよ」と、鍋を見ながら言っている。さて、どういうことなのかな?と思っていたら、なんと、その友達がガラス戸の中のおわんを出している時に、うまいタイミングでご主人が振り返り、直ぐ後ろのコンロの上の鍋に、いま切った魚のブツの塊をポーンと投げ込んだのです。そのあと、まるで何もなかったかのように、友達は鍋をかき回しつつ味噌汁をおわんに次々と移し、酒盛りをしていた連中に向かって「おい、OO」と名を呼ぶと、その彼が直ぐ来て、お客様に味噌汁を出していったのです。

 この一連の出来事は、もう理屈抜きで「かっこいい!」姿そのままで、(東京麹町で育った私にも)ああ、たしかに、子どもの頃はこんな大人たちの「かっこいい!」世界もあったなあ、とつくづく懐かしい思いがしました。人と人とには、言葉を超えた「もっと大切なもの」がある。言葉でいいわけをしたり、言葉でお礼を言ったり、言葉でわびたり、つまらない気遣いを言葉でする現代社会。でも、本当の人間の信頼関係と絆の前では、言葉なんてほどんど価値のないものに私には思えたのでした。

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