« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月

2009年3月23日 (月)

「人間の幸せ」について――理念としくみづくり

34_2 TVの話で恐縮ですが先日、「スウェーデンの消費税が、なぜ高率なのか」という背景を放映していました。日本では消費税をアップする側が必ず言うのが、「日本は消費税が低い。ところが欧米では・・・」という話し。しかし、これには当然、裏があるのです。

 実はスウェーデンの消費税は25%、日本では考えられない数字です。これでは、相当の悪政が行なわれてるのでは、と思うととんでもない間違いで、老後の心配もない制度が整っている、スウェーデンはいわば福祉国家の理想郷のようなうらやましい国家なのです。

 具体的には教育費も大学までは無料で、子育て支援制度も充実しています。病気で失業しても1年間は前の給与の8割が保障されます。老人は年金で暮らせ、在宅介護が普通です。ですから、税金が高くても国民は国家を信用しているので、貯金をする人も少なくお金は国家に預けているという意識なのだそうです。

 では、なぜ、このような社会が実現できているかというと、世の中のしくみが完全に好循環に回るように政治家も国民も努力してきた結果というのが正しい分析と思います。
 例えば、大学まで無税も、将来をになう子どもに対する「教育の機会均等」の精神が見て取れます。また社会では、男性にも育児休暇がありますが、それは単に男女平等だからというような論理ではありません。女性が社会に出て積極的に働いてくれれば税金の払い手が増え、国家の生産力も増すことになるからです。つまり、国家の働き手としてがんばってくれれば高福祉が実現できるから、彼ら自身の見返りとしても積極的に働くわけです。

 つまり、彼らは国家の「幸せ」のしくみを信じています。では、なぜ彼らが国家を信用しているかといえば、政治家を信用しているのです。その大きな根拠として、代議士は普通のサラリーマンとたいして変わらない給与しかもらっていません。代議士自らが言うには「政治家は国民から離れてはいけない」。だから、つねに国民と同じ目線の人々が選ばれ、真の国民の代表となって機能するわけです。

 日本では、地域密着型の小選挙区制でお金がないと選挙が戦えない。だから政治家は高額な給与を定め、なおかつ利権の所有者として裏で金を取る。その政治家を操る役人は、自分たちの保身に汲々として、次から次へと天下りの部署を増産する。日本の国民は、こういう政官財の癒着にどっぷり浸かって税金を無駄遣いしている政治を、いやというほど見てきました。だから、いかに税金を払わないかと節税・免税に注力し、ときには脱税までして払うことを避けるのです。

 スウェーデンのように国民が国家を信用している国と、国家を信用できない国と、どちらの国民が幸せであるか明白です。男も女もみんなでせっせと働いて税金を納める。政治家は国民と同じ生活をし同じ目線を持って、預かったお金を国民の一人として活かすために尽力する。そして年をとったら国民は、国家が「ご苦労様」と老後の面倒をすべて見る。

 目先の福祉だとか票集めのバラマキだとかは、全く性質の異なる政治がそこにあります。つまりスウェーデンには、「国家はどのようにしたら人間の幸せのしくみをつくれるか」という高邁な構想力と理念がまずあるのです。「人間の幸せのしくみづくり」こそ、政治の本質と言っても過言ではありません。

 さて、まず「隗より始めよ」で、私たち経営者ももういちど、スウェーデンの将来を見据えた大局観と構想力に学び、「理念と幸せのしくみ」のメンテナンスをして見ませんか。

| | コメント (0)

2009年3月 9日 (月)

宇宙飛行士の最終試験

33  3月8日のTV「NHKスペシャル・宇宙飛行士の最終試験」という番組で、日本で初めて飛行士2名が選ばれる過程が放映されました。
 その選考試験はまるで夏の甲子園のようで、全国から963名が応募、書類選考で「英語力」が審査され、その後1次選考,2次選考,3次選考と8ヶ月間をかけて最後の10名までに絞り込まれ、1週間の最終選考で3名以内が決定されます。その選考場所に初めてカメラが入り1週間、密着取材が行われました。

 銀行の金庫のような厚い扉が閉められ一切の外出禁止、宇宙船を想定したような環境で1週間、すべてをテレビモニターが映し出すプライベートのない生活をします。その間、グループ分けされたチームに課題が与えられ、その映像が別の場所にいる審査員たちにチェックされ評価の対象となります。

 まずチームに与えられた課題は、「人を癒すロボットをつくれ」。
 限られた時間の中で、どのようにロボット完成までこぎつけられるか、「宇宙飛行士の資質」である「リーダーシップ」が試されます。スタートしてまもなく、ひとりだけ胸と背に被るゼッケン「H」を、「I」につけまちがえたメンバーがいました。これも審査員からは、減点対象。宇宙では、小さなミスが命取りになることも少なくないからです。

 その間、「特技を生かしてどのように皆を楽しくさせられるか」で「人を和ませる力」を評価されます。折り紙を配って「時間内に折鶴をどれだけ折れるか」で、細かい同じ作業の繰り返しからの成果と合わせ「ストレス耐性」を評価されます。その後突然、出来上がったロボットに審査員から「もっとおもしろいものに」と注文がつけられて、ほとんどないような短い時間で「どれだけ要請に応えられるか」で「緊急対応能力」を評価されます。

 実は、これらの能力はすべて、宇宙飛行士の資質として実際に必要とされるものなのです。つまり、今回の採用は、スペースシャトルのリーダーとなれる人物の採用であり「リーダーシップ」が、宇宙の中でストレスをためた人々を癒す必要性から「和ませられる」資質が、細かい作業を根気よくやり遂げる必要から「耐性」が、そして現実にあった教訓で、スペースシャトルが宇宙で故障し3名が地球に戻れない危機に直面した時、存在しない機器をすばらしいチームワークで冷静に作成し奇跡のように地球に生還した事実から「緊急対応能力」が求められているのです。

 そして最後の資質を今度はNASAに直接行って、宇宙に行った土井さんを含めた実際の宇宙飛行経験者7名によって面談テストをされます。その資質の最後は、「宇宙飛行士としての覚悟」です。その面談で、審査員たちは希望者の人物の本質を見抜くのです。つまり「あなたはダレなの?」。

 このようにして10名の最終候補者の中から、厳しい審査に合格して見事2名の新宇宙飛行士が選ばれました。ひとりは、全日空で副操縦士として国内線や国際線のパイロットをしている大西卓哉さん33歳。もうひとりは、航空自衛隊で戦闘機などのテストパイロットとして経験を積んできた油井 亀美也(ゆい・きみや)さん39歳です。2人は、早ければ4年後に国際宇宙ステーションに滞在することになるそうです。

 さて、「リーダーシップ」「人を和ませる力」「ストレス耐性」「緊急対応能力」「覚悟」――これらが今回の宇宙飛行士の最終選考基準でした。よくみるとおわかりのように、「経営者」や「経営幹部」にも必要な資質と能力であることがわかります。つまり、これらの能力は一言でいうならば「人間力」です。この「人間力」は宇宙に行かなくても、地球上においても、やはり「魅力と能力のある人物の資質」と言えるのではないでしょうか。

| | コメント (0)

2009年3月 2日 (月)

プロとしての地道な努力と魂

 映画はまだしも、TVドラマを見ていると「嘘っぽい演技」が気になることありませんか。
 ドラマ全体が安っぽく、薄っぺらになってしまい興ざめすることを、皆さんも経験していることと思います。
 例えばサスペンスドラマの前半によく出てくる場面ですが、不慮の事故で(実は殺人)で亡くなったご主人がいる霊安室に、奥さんが導かれ刑事が顔の白い布を取ると、間髪をいれず「うわあ!」と大声を出して泣き叫び遺体にすがる情景・・・・・
 よくあるでしょ。実は、私はいつも違和感を感じているのです。愛する人の信じられない死に直面した時、人はあんなにすぐに泣き叫ぶのかと。
 私が思うに、人は思いがけない人生のどん底におかれたとき、その現実が信じられない、それが現実と思いたくない自分が本能的に働いて、まずは声が出ず、これは夢ではないか、現実であるはずがないという気持ちと、目に飛び込んでいる現実との板ばさみで、狼狽や葛藤があるはずです。そして、現実を受け入れるまでの間とか時間とかが瞬時でもあり、それでも信じたくない無意識の行動、すなわち放心とか空ろとか取り乱しとか、尋常でない態度を取るのではないでしょうか。その後に、すべてが現実と悟った時に、一気に搾り出すような慟哭と嗚咽があるのだと思うのです。ですから、ある国の葬式に見られる「泣き女」みたいな振る舞いは、とても直ぐには想像できません。おそらく、「北の国から」の原作者・倉本聡氏の脚本はもちろん撮影スタッフなら、あのような安直な演出をしないはずです。映像は作り手も演者もプロならば、「人間の現実と心」をもっと勉強すべきと思うのです。

 そのような安直なドラマがある一方で、日本の映画作品が2つもアカデミー賞をとりました。そして、いま「おくりびと」の話で持ちきりです。この映画は、主役の本木雅弘君が持ち込んだ企画だというところも評判になっている背景です。しかも、それが15年前から彼が温めていた企画だということを知って、私も俳優としての本木雅弘君を見直しています。なぜ、「君」付けで読んでいるかといえば、彼への親愛の情と有望な青年への期待感からです。

 27歳の青年が15年経って、俳優として映画に何を期待し、俳優として何をしたいのかが結実したところに「おくりびと」があり、アカデミー賞が舞い降りたということでしょう。納棺師に師事してプロの所作と心を学び、「役になりきった」本木君が多くの感動をこれから「おくりびと」の映画を見る多くの観客にも与えてくれるに違いありません。

 さて、もうひとり、私が着目している俳優がいます。
 NHK大河ドラマ「新鮮組」の山南敬助役を好演してブレイクし、その後、「篤姫」の徳川家定、そして日航機墜落を扱った「クライマーズ・ハイ」で事件記者を演じた堺雅人君です。
 彼は、先の大河ドラマ「篤姫」でも、人気を盛り上げたひとりとして見逃すわけにはいきません。文芸春秋11月号で彼と原作者・宮尾登美子さんとの対談から、いかに「家定役づくり」のために並々ならぬ勉強をしたかを知りました。

 例えば、家定が出てくる文献として米国大使ハリスの公式記録、補佐役ヒュースケンの日誌などを調べ、歌舞伎の六法というしぐさを演じる時には市川団十郎の「助六」を観劇し、少しでも家定像をつかむために家定モデルといわれる歌川国芳の浮世絵を調べるなど、その「役づくり」への執着は並ではありません。
 また「クライマーズ・ハイ」では、日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールなど日本の権威ある映画賞で、助演男優賞を総なめにしています。この事件記者を演じるときも、「役づくり」のリアリティを得るために30人を越える実際の記者に取材をしたそうです。このような勉強から、彼はほんものの新聞記者の魂を体の中に取り込んでいったのでしょう。

 「プロとはなにか」を考えるとき、この2人の姿勢と魂に、私たちは学ぶべきことがたくさんあります。映画では「いい作品」にあたる、私たちにとっての「いい仕事」―――プロとして私たちも、「役づくり」への地道な努力をもっとしようではありませんか。

| | コメント (0)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »